キーボードに優劣をつけるなら、操作性、信頼性、耐久性で評価の高い「静電容量無接点方式」が有利だということは前回取り上げました。
しかし有接点メンブレン方式の名機たちも負けてはいません。接地する仕組み上どうしても耐久性では劣るものの、操作性、信頼性抜群のキーボードも存在します。
その中から今日は、こだわり方が半端じゃないThinkPadのキーボードを取り上げます。
ポイント1 「快適なフィーリング」
キーを押す際に指が感じる圧力をキーフィーリングと呼びます。有接点はどうしても着時(接地)の衝撃があるため指に負担がかかります。快適なフィーリングを実現するため、ThinkPadのキーボードは押し始め位置から接地までに数段階(スタートポイント→ピークフォース→ボトムフォース→エンドポイント)に分けてフィーリングが変化する構造となっています。
スタートポイントからピークフォースまで押し込むと、そこからボトムフォースまではフィーリングが軽くなり、そこからエンドポイントまでは、だんだんフィーリングが重くなるという具合です。
この曲線はピアノの鍵盤などと同じで、連続して叩くものに最適なフィーリングだということです。
そしてこのフィーリングを実現しているのが「ラバードーム」です。ラバードームはキーと接地面の間でスプリングのような働きをします。凸型の形状をしていて、最初に上の部分がつぶれ、次の段階で下の部分がつぶれることで、先ほどのような複雑なフィーリングが可能となっています。
ThinkPadのキーボードには打ち間違いを減らすための工夫がたくさん詰まっています。
まず最初にキートップは真ん中が少しへこんだすり鉢型になっています。平らだとミスタッチが増えてしまうという統計に基づいています。
キーのスロープで手前部分が広いのは手前のキーを叩いてしまうのを防ぐため、四隅が丸められていたり、ファンクションキー上部が階段状に削られているのは爪のための空間確保です。スペースキーがすり鉢型ではなく蒲鉾形になっているのも理由があります。(指の腹が当たらないように)
ファンクションキーは特別な機能をもっている場合が多いので、誤って押してしまわないように通常キーとファンクションキーの間にはバリアが設置されています。特にESCキーを押すはずが誤ってF1キーを押してしまった場合は、ヘルプが立ち上がり作業が遅れるという理由でESCキーとF1キー間のバリアは他よりも背の高いバリアになっています。
他にもカーソルキーの配置のこだわりや、飲み物をこぼしてしまったときの防滴処理や排水構造など、あげればきりがないほど工夫とこだわりが詰まっています。
最後にキートップの表示色ですが、銀色等にすれば高級感は出るのですが、見た目よりも本当の視認性を追求した結果だということです。
ThinkPadのデザインは好き嫌いが分かれますが、機能美を備えていることは間違いありません。
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