ハードディスクの故障対策として注目され続けているRAID。複数台のハードディスクを仮想的な1台として使用しますので、ハードディスクが動いているうち、1台が壊れても、他のハードディスクで運用が可能なシステムです。
以前にもブログで取り上げましたが、Googleが10万台以上の一般向けのハードディスクドライブを実際に使用した調査論文「Failure Trends in a Large Disk Drive Population」によると、平均年間故障率(average Annualized Failure Rates)は、使用開始から1年は2?5%、2年目から5年目は5?8%との事です。5年で約3割が故障する計算になります。しかし、これはデータが安全に管理されている場所での話で、事務所にサーバーを置いている場合は、熱、埃、振動、停電など、様々な悪条件が故障リスクを増大させますので、故障時のダウンタイムの軽減は多くの企業にとって検討課題といえます。
RAIDシステム導入に際しての検討できる、幾つかの機能を取り上げたいと思います。
■RAID6
基本的にはRAID5と同じ構造になりますが、アレイ内の2台のディスク喪失に対処可能です。RAID5は故障復旧中はパリティの再生成のため残ったハードディスクがフル稼動するため、あるハードディスクを復旧する際、別のハードディスクが故障するという事例が続出しました。その為、近年ではRAID6を採用するケースが増えています。パフォーマンスはRAID5よりやや遅くなります。
■RAID10(もしくはRAID1+0)
最低 4 台のハードディスクを使用し、ミラーリングされたデータをストライピングをすることで、RAID1 のデータの障害に対する安全性と RAID0 の高速化を持ち合わせています。アレイ内の2台のディスク喪失に対処可能です。ディスク使用率は50%と落ちますが、最近はディスク自体の価格が低下している為、ミラー構成が見直されています。パフォーマンスはRAID5や6より早いです。
■ホットスワップ
ホットスワップとは、コンピュータの電源を入れたまま、パーツやケーブルを装着することを言います。ハードディスクが壊れた場合でも、システム全体を止めることなく、故障した部分だけをホットスワップで交換することができます。
一般的に、通電された状態の電気回路では、何の対策もせず、電気信号の配線を突然切り離すと電気回路が故障することがありますので、ホットスワップ対応の電気機器は、回路が故障しないよう、特殊な対策が施されています。例えば、大きな電流が流れる電力線が切り離される前に、電気信号の配線を切り離す、といった工夫がされています。
■ホットプラグ
これもホットスワップと同義語として使われています。厳密には、ホットスワップはデバイスレベルで行われるもので、オペレーティングシステムのコマンドが不要なのに対し、ホットプラグはオペレーティングレベルで行われる為、システムのコマンドが必要なものとの位置づけの様です。
■ホットスペア
ホットスペアとは、故障に備えて、あらかじめ予備の代替機器を通電状態で待機させておくことを指す。ホット・スタンバイとも呼ばれます。
RAIDにより耐障害性を高めているディスク・サブシステムでは、このホットスペアが実装される事がよくあります。ホットスペア用として設定されたディスクは、通電された待機状態になっており、もし、1台のハードディスクが故障した場合、RAIDコントローラは、故障したディスクを論理的に切り離し、ホットスペア用ディスクを起動し、残っているデータとパリティ情報などからホットスペアのディスクに必要なデータを書き込み、元の正常な状態に復旧させるところまでをすべて自動的に実行します。なかには、障害対応の故、ばらばらになったハードディスクの順番を直してくれるものまであり、至れり尽くせりです。
■ハードウェアRAIDかソフトウェアRAIDか。
上記の機能は差はあるものの、ソフトウェアRAIDもハードウェアRAIDもこれらの機能を提供しています。何が違うでしょうか? ソフトウェアRAIDはメリットとして、ハードウェアRAIDカード(上記の機能をつけると5万以上)を買わなくて良い分、安いです。また、カードが故障した時や生産終了となった時に備えて、予備を買っておく必要もありません。また、ハードウェアRAIDカードが使用するOS上で利用可能かつ安定動作するかどうか、気にする必要はありません。しかし、ディスクを本体から取り外してバックアップイメージを取ることはできません。
ハードウェアRAIDのメリットは、一般的にソフトウェアRAIDと比べ、早いです。パフォーマンスを求めるならばハードウェアRAIDを組むのが良いといえます。また、CPU資源を有効活用できます。
最近は手頃なNAS製品が多く出回っており、導入が容易になりました。しかし、安い分、専用のファイルサーバと比べ、規模によってはパフォーマンス不足になりやすく、障害時の対応が難しい場合があります。NAS導入の際は、安い製品に飛びつくのではなく、データの保全(バックアップ)、運用、障害対応を含め価格とのバランスを考慮した、さまざまな面からの検討が必要といえます。